@人生ほぼ登山です。
皆さんは、数字、好きですか。
私は、昔からそれほど得意ではありませんでした。
学生時代の数学の授業は、正直なところ苦痛でしかありませんでしたし、
社会人になってからも、最初は経理や財務といった分野には苦手意識がありました。
でも、FP(ファイナンシャルプランナー)1級や宅建の勉強、そして15年以上の投資経験を通じて、数字に対する見方がガラリと変わりました。
数字は、単なる計算の対象ではなく、自分の人生という登山において、
現在地と目的地を正確に把握するためのコンパスや高度計のようなものだと気づいたからです。
今回は、資産形成の基礎となる簿記的な考え方と、
そこから広がる2つの資本の話について書いてみたいと思います。難しい数式は使いません。
人生の経営戦略としての数字の話をします。
【1】 簿記は、家計の健康診断書
皆さんは、簿記という言葉を聞いて何を思い浮かべますか。
会社の経理担当者がやる難しい計算、というイメージがあるかもしれません。
でも実は、簿記の考え方は、私たちの家計管理にこそ威力を発揮します。
家計において多くの人が気にしているのは、
毎月の給料(収入)と生活費(支出)のバランスではないでしょうか。
これは、簿記でいうところの損益計算書(PL)にあたります。
今月は黒字だった、赤字だったと一喜一憂するのは、このPLの視点です。
しかし、資産形成で本当に大切なのは、もう一つの視点、貸借対照表(BS)です。
これは、いま手元にどれくらいの財産(資産)があり、どれくらいの借金(負債)があるか、そして、その差額である純資産はいくらか、というある一時点での状態を表すものです。
例えば、立派なマイホームや高級車を持っていても、それが多額のローン(負債)によって成り立っているなら、純資産はマイナスかもしれません。
逆に、見た目は質素な生活をしていても、借金がなく、コツコツ積み上げた投資信託や預金がたっぷりあれば、純資産はプラスで、家計の体質は極めて健全だと言えます。
PL(毎月の収支)だけでなく、BS(資産全体のバランス)を意識すること。
これが、数字に強くなる第一歩であり、お金の不安を減らすための土台になります。
私は定期的に、自分の家計のBSを作成して、純資産が右肩上がりになっているかを確認しています。
これが心の安定剤になっています。
【2】 財務資本を育てる──お金に働いてもらう仕組み
貸借対照表(BS)の左側にある資産。
これを個人の人生に置き換えると、大きく二つの資本に分けられると考えています。
一つ目が財務資本です。
財務資本とは、現金、預金、株式、投資信託、不動産など、いわゆるお金として換算できる資産のことです。私たちがNISAやiDeCoで一生懸命積み立てているのは、この財務資本を育てる行為にほかなりません。
財務資本の最大の特徴は、自分が寝ている間も働いてくれることです。
投資信託を持っていれば、世界中の企業が利益を上げ、その一部が分配金や基準価額の上昇という形で還元されます。
これは、自分一人の労働力には限界がある中で、資産形成を加速させるための強力なエンジンです。
私が投資を続けている理由は、単にお金を増やしたいからだけではありません。
財務資本が育つことで、人生の選択肢が増えるからです。
嫌な仕事を我慢して続ける必要がなくなったり、挑戦したいことができたときにリスクを取れるようになったりする。つ
まり、財務資本は自由への切符なのです。
まずは、生活防衛資金という現金を確保しつつ、余剰資金を株式などのリスク資産に振り分け、時間をかけて財務資本を雪だるま式に大きくしていく。これが資産形成の王道であり、スタート地点です。
【3】 見えない資産、人的資本を磨く
しかし、財務資本だけでは片手落ちです。もう一つ、私たちが生まれながらに持っている、極めて重要な資産があります。
それが人的資本です。
人的資本とは、自分自身が将来にわたって稼ぎ出す力の現在価値のことです。
スキル、知識、経験、健康、信用、人脈などがこれに含まれます。
若い時は、手元の貯金(財務資本)は少ないかもしれませんが、これから長く働けるという時間と体力、つまり人的資本は莫大です。
逆に、定年退職を迎える頃には、人的資本は減少していきますが、
その分、退職金や積み上げた投資資産(財務資本)が増えているのが理想的な形です。
私はFPや宅建、はたまた、電気工事士などの資格を取得してきましたが、これは単なる趣味やコレクションではありません(もちろん、趣味的要素も多分にありますが(汗))。
自分の人的資本の価値を高め、メンテナンスするための投資だと考えています。
資格があることで仕事の幅が広がったり、副業の可能性が見えたりすることは、人的資本の強化につながります。
また、健康も重要な人的資本です。
どんなに能力があっても、病気で働けなくなれば、その価値を発揮することはできません。
私が趣味の登山で足腰を鍛えたり、生活習慣に気を使ったりしているのは、この人的資本という資産が毀損しないようにメンテナンスをしている感覚に近いです。
【4】 2つの資本のバランスで人生を経営する
結局のところ、人生の経営戦略とは、
この人的資本をいかに効率よく財務資本に変換していくか、というプロセスなのだと思います。
毎日会社に行って働くことは、自分の人的資本を切り売りして、給料という現金(財務資本)に換えている行為です。
そして、その得た現金を消費で使い切ってしまうのではなく、一部を投資に回して、さらに財務資本を育てていく。このサイクルを回し続けることが大切です。
しかし、人的資本を財務資本に変えることばかりに必死になりすぎて、
心身を壊してしまっては元も子もありません。
人的資本の源泉である健康や家族との時間、精神的なゆとりを犠牲にしてまで、数字上の資産を増やすことに意味はないと思います。
数字に親しむということは、単に節約したり投資利回りを計算したりすることだけではありません。
自分という会社が持っている財務資本と人的資本のバランスを常に見渡し、
どちらかが不足していないか、無理をしていないかを客観的にチェックすることです。
簿記的な思考を持つことで、見えない不安が見える課題に変わります。
感情に流されず、数字という事実に基づいて人生の舵取りをする。
それが、大人の資産形成であり、自立した生き方なのだと思います。
これからも、焦らず、一歩ずつ。
二つの資本を大切に育てながら、人生という山を登っていきたいと思います。

